今回はおすすめ漫画『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』の魅力をわかりやすく解説したいと思います!
ペリリュー島で行われた「ペリリューの戦い」をご存知でしょうか?
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』は日米合わせて5万人もの兵が死闘を繰り広げた「ペリリューの戦い」を描いた漫画です。
私はこの漫画を読むまで、「ペリリューの戦い」のことを知りませんでした。
戦争漫画というと読みにくいイメージが先行して、なかなか手に取らない方も多いかもしれません。
しかし『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』ではキャラクターを三等身で描くなど可愛らしい絵柄で描かれており、戦争漫画が苦手な人でも読みやすく作られています。
本作品は読みやすく、面白く、そして恐ろしく戦争を描いた新しい戦争漫画の傑作なのです。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』ってどんな漫画なの?
結論からいうと、以下のような漫画です。
- ペリリューの戦いを史実に基づいて描いたフィクション漫画
- 可愛らしい絵で凄惨な戦場を描く漫画
- 戦争の日常、兵士の心情をわかりやすく描いた漫画
- 読みやすいが読後感が重い漫画
作品情報
作者は武田 一義先生で、『ヤングアニマル』(白泉社)にて2016年4号から2021年8号まで連載され、完結済みです。
2017年日本漫画家協会賞優秀賞を受賞しました。
戦争漫画としては珍しく若い世代から人気があり、発行部数30万部以上の人気漫画です。
連載終了と同時にアニメ化が発表され、これから話題が高まると思われます。
本作品では、目を背けたくような信じがたい場面も多いですが、作者が相当の調査や生還兵の聞き取りなどされ、それをもとに執筆されているので戦争の現実とかなり近いと思われます。
あらすじ
まずは作品のあらすじです。
昭和19年、夏。太平洋戦争末期のペリリュー島に漫画家志望の兵士、田丸はいた。
そこはサンゴ礁の海に囲まれ、美しい森に覆われた楽園。そして日米合わせて5万人の兵士が殺し合う狂気の戦場。
当時、東洋一と謳われた飛行場奪取を目的に襲い掛かる米軍の精鋭4万。迎え撃つは『徹底持久』を命じられた日本軍守備隊1万。
祖国から遠く離れた小さな島で、彼らは何のために戦い、何を思い生きたのか――!?『戦争』の時代に生きた若者の長く忘れ去られた真実の記録!
Amazonより
ペリリューの戦いを漫画家志望で気弱な田丸隊員の視点で描いた漫画です。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』のここが面白い!
どういうところが面白いのかをお話しします!
なお内容について触れる関係上、若干のネタバレを含む可能性がありますが、ご理解の程をお願いします
読みやすく描かれる戦争のリアル
戦争漫画というだけで嫌煙する人が多いと思われますが、そのような人でも読みやすいように作られています。
実際に若い世代に人気だそうです。
デフォルメされた可愛い絵柄
以下の通り、ほのぼの漫画のような可愛らしい三等身のキャラクターで描かれています。
戦争漫画は重々しい絵柄で描かれていることが多いので、カジュアルに手にとって読み進めやすい漫画といえます。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻より
戦闘などで人が死ぬようなグロテスクなシーンでも、目をそむけずに受け止めやすいかもしれません。
共感しやすい弱気な主人公
主人公の田丸は22歳で、漫画家になるのが夢の青年です。
戦場にきたというのに、空き時間で手帳に漫画を描いたりしています。
気弱で、早く戦争に勝って無事に日本に帰り漫画を書きたいと思っています。
田丸はどこかお気楽で、戦争作品でよく見る「国のために命をかけるぞ」という意気込みはほぼ感じられず親しみやすい性格が緊張感を和ませてくれます。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻より
田丸は漫画を描いていたことを買われ、小隊長に功績係に任命されます。
功績係とは内地の遺族に向けた隊員の「最期の勇姿」を手紙に書く仕事です。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻より
そして田丸は戦争の悲惨な現実に直面しながら、隊員たちの最期を見届ける役目を担うのです…
戦争の日常や、徐々に戦場に変わっていく様子が丁寧に描かれている
戦争では戦って死ぬだけではなく、コケて頭打って死んでしまったり仲間の銃が暴発し偶然あたって死んだり、事故であっけなく死ぬことも多かったようです。
功績係を務める田丸は隊員たちの「最期の勇姿」を遺族に届けなければなりません。
しかし、戦うこともなく事故で死んだ隊員たちの事実を遺族に送ることは小隊長に禁止されてしまいます。
実は漫画を描いていたから任命されたというのは作り話の才能を買われただけだったのです。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻より
田村は後ろめたい気持ちを抱えながら、隊員たちがどんな身も蓋もない死に方をしても、勇敢に戦ったストーリーを作り手紙にしたためます。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻より
上記のような死因の捏造のようなことも日常的に行われていたのでしょうか。
現代でも「先祖は戦地で勇ましく戦って死んだ」というような話を聞いたりしますが、実際どのように死んだのかは、当時戦場にいた兵士たちにしかわからないのです。
田丸は功績係の仕事や穴掘りをするなどまだ余裕のある日々を過ごしますが、米軍が攻めてきてから、徐々に日常が戦場へ変わっていきます。
ペリリュー島に到着したときはサンゴ礁の海に囲まれ、熱帯の豊かな森に覆われた小さな楽園のようでしたが、米軍の空襲によりあっという間にペリリュー島は岩肌の見える荒野に変わりました。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻より
徐々に人と人が殺し合う世界に変わっていく様子が丁寧に描かれ、兵士たちの恐怖が現実味を帯びて伝わってきます。
現代と変わらない感覚の兵士達
ペリリュー島は熱帯気候らしく高温多湿で日差しも強い。飲料水に適した河川がないことから、兵士の飲料水は主に雨水か、かろうじて飲める湿地のドロ水しかなかったようです。
米軍と戦う日々なのに物資の支援が常に不足しており、食べ物どころか水も飲めない状況が続き、死体の水筒を遠慮がちにもらったりしてギリギリ耐える日々をおくります。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻より
外を出歩くと米軍に発見されて殺される危険が高いので、暑苦しい洞窟で日中の大半を過ごします。
とにかく消耗していく中で数少ない水場に補給しにいきますが、米軍が待ち伏せされて補給班が皆殺しにされます。
この殺された隊員たちは、国のためではなく水のために殺されてしまったことを田丸たちは悲しむのです。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』2巻より
なんて惨いのでしょうか…。
本作品ででてくるキャラクターたちは、教養もあって漫画も好きなど今の日本人と変わらないようにみえます。
というのも舞台は昭和19年(西暦1944年)の出来事であり、現代からみてほんの数世代前の世代の話なのです。
おじいさんやひいおじいさんくらいの世代の若者が、死が隣にある世界で戦っていたことを改めて認識します。
反戦漫画ではなく戦争に対してフラットに描いている
戦地で死ぬことを恐れているのは日本人側だけではありません。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻より
当然米軍側の兵士にもひとりひとり家族や恋人がいて、故郷を離れて命がけで戦っています。
戦場にいる兵士たちが、みなどれほど恐怖を抱えて殺し合っていたのかを考えてしまいます。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』では日本とアメリカのどちらが悪いのかや、誰が悪いのかと考えさせるような描き方は一切しません。
描かれているのは、ただ兵士みんなが戦場で必死に生きていることだけです。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻より
「戦場でどのようなことが起こっていたのか」をただ描くことで、戦争に対して何を感じるか、どう考えるかは読者に委ねられているように感じます。
戦争はだめだ!と簡単な結論を出すだけではなく、この漫画で描かれているような恐ろしい世界がすぐそばで待っているかもしれないと想像することが大事なのではないかとわたしは考えました。
まとめ
巻を進めるほど凄惨さを増していく戦場で、田丸は生き残れるのか?そして日本へ帰ることはできるのか?
漫画の物語も、実際のペリリューの戦いにも興味を持ってくだされば幸いです。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』のオススメ&ご紹介は以上です!
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