今回はおすすめ漫画『リウーを待ちながら』の魅力をわかりやすく解説したいと思います!
もしも新型コロナウイルス感染時の死亡率が100%だったら、どんな事態になっていたのだろう…なんて考えたことはありませんか?
2021年10月現在、新型コロナウイルスによって世界は未だ未曾有のパンデミックに見舞われています。
「緊急事態宣言」「ロックダウン」なんて、数年前には無縁だった言葉が馴染みのあるものになってしまいましたね。
『リウーを待ちながら』は2017年~2018年に連載された、あるウイルスの蔓延を描く医療サスペンス漫画です。
新型コロナウイルスが世界に蔓延しだした頃、私は本作品『リウーを待ちながら』を思い出しました。
初めて読んだときは「もし日本で感染症が蔓延したらこうなるのか」とリアリティのある描写に怖くなったのを覚えています。
本作品で描かれる感染症の対応に追われる医療現場、ウイルスによって変えられていく日常が『予言』といえるほど現実の状況と重なります。
ウイルス蔓延の恐ろしさ、そしてそれに立ち向かう人間の逞しさを描く漫画『リウーを待ちながら』をオススメ&ご紹介したいと思います!
『リウーを待ちながら』ってどんな漫画なの?
以論からいうと、以下のような漫画です。
- ウイルス蔓延を描いたリアリティのある医療サスペンス漫画
- 医療現場での人間模様を描く漫画
- 老若男女におすすめできる漫画
- 実写ドラマ化しそうな漫画
- 巻数が少ない完結済みの漫画(全3巻)
作品情報
『リウーを待ちながら』は『イブニング』2017年3号 – 2018年4号にて連載され、完結済みです(全3巻)。
タイトルの由来は、アルベール・カミュの小説『ペスト』の主人公「リウー」の名と、不条理演劇として知られるサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』をかけているそうです。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、本作品は2017年~2018年に連載された作品ながら現在と重なる描写のリアルさが注目され、緊急重版された注目作です。
作者について
作者は朱戸アオ先生です。
代表作は『インハンド』。テレビドラマ化され、2019年4月12日から6月21日までTBSテレビ系「金曜ドラマ」枠で放送されていました。
朱戸アオ先生は医療を扱う漫画が多いのですが、医療関係者ではありません。毎回入念に取材をして描かれているようです。
あらすじ
まずは作品のあらすじです。
なお内容について触れる関係上、若干のネタバレを含む可能性がありますが、ご理解の程をお願いします
舞台は富士山麓の美しい街・S県横走市。
主人公は医師・玉木です。美人で情が厚いですが愛想を振りまくことはない、仕事一筋の女性医師です。
『リウーを待ちながら』1巻より
玉木が勤める病院の前で、駐屯している自衛隊員が倒れているのが発見され入院します。
これが悲劇の始まりでした。
その後、入院した自衛隊員と同じ症状で入院し死亡する患者が相次ぎます。
玉木ら医師は対応にあたりますが、病因はわからず検査機関に調査を依頼します。
『リウーを待ちながら』1巻より
検査結果を待つ間にも患者は日に日に増え続け、病院に患者が殺到するようにまでなりました。
『リウーを待ちながら』1巻より
検査機関から連絡があり、原因は自衛隊が海外派遣先の中央アジアから持ち込んでしまったあるウイルスだと判明します。
そのウイルスは非常に感染力が高い上に、死亡率100%の恐ろしいウイルスに進化していました。
『リウーを待ちながら』1巻より
そして町の人々の生活は一変し、日常が壊れていきます…。
状況は悪化の一途を辿り、ウイルスは悲しむ暇も無いほど人々の命を一瞬で奪っていきます。
玉木らがこのウイルスが撒き散らす絶望に対し、どう立ち向かうかを描いた漫画です。
『リウーを待ちながら』のここが面白い!
どういうところが面白いのかをお話しします!
なお内容について触れる関係上、若干のネタバレを含む可能性がありますが、ご理解の程をお願いします
コロナ渦の現実とリンクする緊迫状況が恐ろしい
『リウーを待ちながら』でもウイルス蔓延により瞬く間に感染者が増えていき、普段どおりの生活はできなくなっていきます。
それはコロナ渦の現実と重なる所も多く、『予言』のようです。
横走市の学生はオンライン授業に変わりました。町は全員がマスクをつけるようになります。
そして緊急事態宣言が発令され、政府からの外出自粛の協力依頼があったり食料や日用品の不足などが起こります。
『リウーを待ちながら』1巻より
ここまでは現実とリンクしていますが、作中ではさらに悪い状況に陥ります。
なぜなら本作品で登場するウイルスは新型コロナウイルスと違い、「発症したら確実に死ぬ」からです。
『リウーを待ちながら』1巻より
みな神経質になっているからか、横走市出身の人などが全国で差別に近いような扱いをうけてしまったりします。
残念なことですが、横走市は死者の処理も追いつかないほどの惨状なのでしょうがないのかもしれません。
『リウーを待ちながら』1巻より
もし新型コロナウイルスの死亡率が100%だったら、本作品のような事態になっていたのかも…と感染症が起こす様々な影響の恐ろしさを再認識させられます。
ウイルスに立ち向かう人間ドラマがグッと来る
本作品では感染症の対応に追われる医療現場での人間ドラマが秀逸に描かれているのも特徴です。
玉木の目の前には連日大量の患者が押し寄せ、どう対応することが正しいかじっくり考える暇もありません。
「どうせ助けることはできない」とわかっているから、徐々に絶望が玉木を襲います。
それでも、感染した親子の病床は隣にするように掛け合うなど目の前で苦しむ患者の願いを叶えようと精一杯対応する主人公に胸が痛みます。
『リウーを待ちながら』1巻より
同級生、家族、恋人、婚約者、または自分自身…大事な人を無差別に感染症が奪っていきます。
作中で描かれている、新婚夫婦の妻側だけがウイルス感染したシーンが印象的です。
ある日夫が帰宅すると、妻が発熱しており自分が触れた箇所を消毒しているところでした。
そしてウイルス感染が発覚した妻は、病院に連れて行かれました。
『リウーを待ちながら』2巻より
濃厚接触者になると3日間は自宅から出てはいけない決まりになっています。
そのため夫は自宅に閉じ込められてしまい、妻はそのまま病院で亡くなってしまいました。
つまり、妻が病院に連れて行かれた時が事実上のお別れになってしまったのです。死体の確認もできていません。
幸い夫は感染していませんでしたが、新婚で幸せの絶頂のときに妻を亡くした現実を受け入れられない様子がいたたまれません。
道でうずくまっていると、同じく母親をウイルスで亡くした横走の女子高生から話しかけれます。
生前にきちんとお別れができなかったり一言伝えられなかった言葉を誰もが抱えていることを共有したことをきっかけに、夫は一歩前に進みだします。
『リウーを待ちながら』2巻より
以上のように、本作品ではウイルスで大切な人を失い残された人たちがどのようにそれを受け止め、どう前進していくかの人間ドラマが丁寧に描かれています。
しんどい展開も多いですが、死を意識して気づく日常の当たり前の尊さにハッとさせられます。
新型コロナウイルスによって死者が増え続ける現在でも、似たようなケースが全国であるかもしれませんね…。
感染症蔓延は、誰が悪いのだろう?と考えさせられる
感染症蔓延とは誰が悪いのでしょうか?
母親をウイルスで亡くした横走の女子高生が、「悪いのは病気をここに持ってきた人達でしょ」と憤るシーンがあります。
対して、主人公に協力する男性医師は「日本人が安い豚肉を食べるために環境基準の緩いメキシコの村に養豚場が造られ、新型インフルエンザは同じメキシコの村から来た」と言います。
そして、「悪いのは新型インフルエンザを日本に持ち込んだ人かな?」と問いかけるシーンが印象的です。
『リウーを待ちながら』2巻より
作中で猛威をふるうウイルスを横走市に持ち込んだ自衛隊員は、キルギスで起こった大震災の救助隊として派遣された人達です。
人助けに行った自衛隊員が悪いのでしょうか?
もちろん、そんな単純な問題ではないですよね。
上記のシーンは悪を認定して攻撃対象を探しがちな社会への問題提起とも受け取れ、考えさせられます。
ネットのインタビューで朱戸アオ先生は以下のように話していました。
理由を考えるのは、人間の進歩の原動力だが、常に正解が分かるわけでもない。信じたものによっては、他者を攻撃することにもなる。それは人間の性(さが)だ。
自分の行動がもたらす結果を想像してもらえたら。
東京新聞webより
では、新型コロナウイルス蔓延は誰が悪かったのでしょうか?
この漫画を読み、ひとりひとりが複雑な問題について考えてみるきっかけになればと思います。
『リウーを待ちながら』を無料で読む方法
Amazonや楽天で期間限定で1巻が無料になっていることもあるようです。
リンクを以下に置いてますのでご確認ください。
無料になっていなかった場合は、公式サイトで1話を試し読みしてください。
まとめ
私がこの漫画を読んだ当時は感染症蔓延なんて「漫画の世界の話」であり、他人事でした。
しかし感染症蔓延は現実になってしまいました。
作中の描写は現在のコロナの状況と重なることも多く、今読み返せばただ面白いだけでは済まない作品となります。
全3巻完結なので、一気に読み切れます。
今だから読みたい漫画として間違いなくおすすめできる作品だと思いますので、ぜひ読んでみてください!
他のおすすめ漫画
『リウーを待ちながら』にハマった方はきっと以下の漫画もハマります!
合わせて読んでみてください。
- インハンド
- ブラックジャックによろしく
- フラジャイル
- アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり
- Dr.コトー診療所